マッチングアプリの普及に伴い、その利便性の裏で「ぼったくり」や「詐欺」の被害が深刻な社会問題となっています。かつては繁華街での強引な客引き(キャッチ)が主流だったぼったくりですが、近年は「マッチングアプリで出会った相手に誘われて店に行く」というデジタル媒介型の手口へと完全にシフトしています。
この問題は、決して「男性だけが警戒すべきもの」ではありません。美人のサクラに誘われる男性の被害はもちろん、近年はイケメンのサクラや「紹介したい店がある」と言葉巧みに近づく加害者に、女性がターゲットにされて高額なバーやコンセプトカフェへ連れ込まれる被害も多発しています。
本記事では、直近の2026年の摘発事例から過去の重大事件を時系列で振り返り、男女それぞれの視点から見たぼったくりの実態、さらに巧妙な手口から身を守るための防犯対策を徹底解説します。
- 最新のぼったくり手口
- 男女で異なる詐欺の特徴
- 被害を防ぐ徹底防犯対策
- 騙された時の緊急対処法

マッチングアプリぼったくり事件の時系列

近年発生した主要なマッチングアプリぼったくり事件のタイムラインです。手口がどのように巧妙化し、男女を問わずターゲットが広がっているのかを俯瞰します。
2020年9月 歌舞伎町「ミテコ(未成年)」利用ぼったくりバー摘発
新宿・歌舞伎町にて、18歳未満の未成年(通称ミテコ)をマッチングアプリなどのサクラとして潜入させ、利用者を組織的にぼったくりバーへ誘導していた経営者らが児童福祉法違反(有害支配)容疑で逮捕。
2023年3月 3時間で110万円請求、恐喝容疑での大量摘発
歌舞伎町の特定のバーで、利用者に「1時間5,000円」と告げて入店させながら、わずか3時間で約110万円という暴利を請求。数ヶ月で48件もの通報が寄せられていた店舗の従業員らが恐喝容疑で逮捕。
2025年6月 警視庁による「3チーム制」組織的グループの摘発
複数のチームに分かれ、マッチングアプリでターゲットを誘い出して因縁をつけ、現金を脅し取る組織的ぼったくりグループのリーダー格ら6人が警視庁に逮捕。
2025年7月 渋谷・障害者を標的にした悪質ぼったくりグループ逮捕
障害者向けマッチングアプリを悪用し、視覚障害のある20代男性をバーへ連れ込み、トランプゲームを口実に高額請求(70万円)した男女7人が逮捕。累計530万円以上の被害が発覚。
2026年6月 大阪・レンタルルーム「バー偽装型」での87万円詐取事件
大阪市北区のレンタルルームを一時的にバーへ偽装し、マッチングアプリで知り合った中国籍の女らがターゲットを連れ込んで87万円をだまし取ったとして男女4人が逮捕。
2026年6月 新宿・偽装レンタルスペース型ぼったくりグループ逮捕
16歳の少女をマッチングアプリのサクラとして使い、飲食店に見せかけたレンタルスペースにターゲットを連れ込んで約53万円をだまし取った詐欺グループのトップら4人が逮捕。被害総額は約1,900万円に上る。
【2026年直近の事件】店舗を持たない「偽装レンタルスペース型」の台頭

2026年現在、マッチングアプリぼったくりの最大のトレンドであり、警察が最も警戒を強めているのが「常設の店舗を持たず、時間貸しのレンタルスペースをバーに偽装する」というゲリラ的な手口です。
新宿・16歳少女を利用した1,900万円ぼったくりグループの摘発(2026年6月)
2026年6月17日、警視庁はマッチングアプリで知り合った相手を飲食店に偽装したレンタルスペースに連れ込み、高額な料金をだまし取ったとして、グループのトップである沓沢大樹容疑者(28)ら男女4人を逮捕しました。
- 事件の概要:容疑者らは2026年2月、東京・新宿区のレンタルスペースをバーのように内装し、マッチングアプリで客を装った16歳の少女に20代の被害者を連れてこさせました。そこで高額な飲食代を請求しただけでなく、「予約のキャンセルが入った」などと理不尽な因縁をつけ、賠償金名目などで合計約53万円を騙し取った疑いが持たれています。
- 卑劣な追い込み:被害に遭った人物は手持ちの現金やクレジットカードの枠が足りなかったため、容疑者らによって消費者金融に連れて行かれ、その場で借り入れをさせられて支払わされていました。
- 被害規模:新宿区を中心に同様の被害が少なくとも30件ほど確認されており、被害総額は約1,900万円に上るとみられています。
【参考文献・引用元】
大阪・「トクリュウ」の影がちらつくバー偽装詐取事件(2026年6月)
東京だけでなく、大阪でも同様の「偽装レンタルルーム型」の手口で逮捕者が出ています。2026年6月12日、大阪府警は無職の大川修平容疑者(28)や中国籍の候泓延容疑者(21)ら男女4人を詐欺の疑いで逮捕しました。
- 事件の概要:2025年10月、候容疑者がマッチングアプリで20代の被害者と知り合い、大阪市北区にある「バーを装ったレンタルルーム」に誘い出しました。事前には「飲み放題3,000円」と説明して安心させておきながら、入店後にメニューにない高額な酒を候容疑者が大量に注文。その後、候容疑者は何食わぬ顔で姿を消し、店員役の大川容疑者らが「連れの分の代金も支払ってもらう」と迫り、現金87万円をだまし取ったとされています。
- トクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)との関連:このグループはSNS等を通じて緩やかに結びつき、役割分担を変えながら犯行を繰り返す「トクリュウ」の特徴を備えていることが分かっています。
【参考文献・引用元】
【2025年の事件】社会的弱者を標的にする悪質化

2025年には、単に「出会いを求める人」という枠を超え、心理的な抵抗や相談がしにくい「社会的弱者」を狙い撃ちにした極めて凄惨なぼったくり事件が摘発され、日本中に衝撃を与えました。
渋谷・視覚障害者らから530万円を搾取したトランプゲームぼったくり事件(2025年7月)
2025年7月30日・31日、警視庁は障害者向けのマッチングアプリを悪用して高額な現金をだまし取ったとして、元飲食店従業員の佐古壮汰容疑者(22)や菅原梨那容疑者(24)ら男女7人を逮捕・再逮捕しました。
- 事件の概要:生まれつき弱視(視覚障害)の20代男性は、2025年2月頃、「障害があるため出会いが少ない。理解のある良い人がいれば」という純粋な思いからアプリをダウンロードしました。そこで「りさ」と名乗る菅原容疑者とマッチングします。
- 犯行の手口と恐怖の高額請求:JR渋谷駅前で待ち合わせをした後、言葉巧みに渋谷区内の薄暗いバーへと誘導され、トランプゲームを持ちかけられて罰ゲームと称し大量の酒を注文させられました。入店から約2時間後、店員から「お会計が70万円」と告げられます。パニックになった男性は店員2人に連れられて近くのコンビニATMへ向かわされ、現金を下ろして支払わされました。
- 容疑者の卑劣な供述:取り調べに対し、容疑者らは「障害者は実家暮らしが多く、お金を持っていると思った」と供述しており、弱者の境遇や財産を意図的に狙った計画的な犯行であることが浮き彫りになりました。
【参考文献・引用元】
因縁を付けて金を請求する「3チーム制」グループの逮捕(2025年6月)
2025年6月19日には、マッチングアプリでターゲットを誘い出した後、組織的に因縁をつけて現金を脅し取る「3チーム制」のぼったくりグループのリーダー格ら6人が警視庁に逮捕されました。
このグループは、①アプリで誘い出す「サクラ役」、②店内で高額請求する「店員役」、③支払いを拒む相手に対して「ルールに従え」などと暴力的な口調で因縁をつける「威嚇役」に完全に分かれて行動していました。
【参考文献・引用元】
【過去の重大事件】歌舞伎町を中心とした組織的ぼったくりの歴史

現在の「ゲリラ型(レンタルスペース)」や「弱者標的型」へ手口が変化する前は、東京・新宿の歌舞伎町などを舞台とした「店舗型」の組織的ぼったくりが全盛を極めていました。
3時間で110万円請求、恐喝罪での大量逮捕(2023年)
2023年には、歌舞伎町の特定のぼったくりバーが短期間に甚大な被害を出して摘発されました。
ターゲット2人に対して「1時間5,000円」と説明して入店させたものの、わずか3時間の滞在で約110万円という法外な金額を請求。客が手持ちの35万円を支払ったものの、「足りねえ分はどうするんだ」と従業員らが激しく威圧し、残りの不足分を支払うという「念書」を無理やり書かせていました。
【参考文献・引用元】
【男女別】マッチングアプリに潜むぼったくりの罠

報道される事件の多くは「男性被害者×女性サクラ」の構図ですが、実際には女性を狙った悪質なぼったくりやデート商法も多発しています。男女で異なる「狙われ方」の違いを理解しておくことが重要です。
男性が狙われるパターン:経済的搾取と肉体的威嚇
男性を狙うグループは、「美人のサクラ」を広告塔にします。
- 主な手口: 「お酒が大好き」「内緒の隠れ家バーがある」と誘い、実際には存在しないゲリラバーやレンタルスペースに連れ込みます。
- 特徴: 会計時に数十万円の法外な金額を突きつけ、支払いを拒むと体格の良い男性店員(威嚇役)が複数人で囲み、心理的・肉体的な恐怖を与えてATMや消費者金融へ同行させます。
女性が狙われるパターン:恋愛感情の悪用と関係性の人質
女性を狙うグループは、「容姿端麗なイケメンサクラ」や「ハイスペックな男性」を装います。
- 主な手口: 「知り合いが経営している特別なバーがある」「お祝いしたいからオシャレなコンセプトカフェに行こう」と誘います。
- 特徴: 入店後、男性サクラ側が「面白いゲームがある」「特別なボトルを開けよう」と主導して高額な注文を連発します。会計時に「カードが止まっちゃった」「財布を落としたみたい。後で絶対に返すから、一旦立て替えてくれない?」と、女性側の好意や不信感を持たれたくない心理(関係性の人質)を利用し、自発的に大金を支払わせようとします。また、悪質なホストクラブやメンコン(メンズコンセプトカフェ)への売掛金(ツケ)を背負わせる手口とも地続きになっています。
【考察】なぜ具体的な「アプリ名」は報道されないのか?

ニュースを見ていて「なぜ犯行に使われた具体的なアプリ名(Pairs、Tinder、with、Omiaiなど)が流れないのか?」と疑問に思う方も多いでしょう。これにはメディア側の明確な配慮があります。
アプリ自体は「合法的なツール」であるため
マッチングアプリそのものは、適切な運営を行っている「合法的なプラットフォーム」です。ツールそのものに違法性がない限り、企業名やサービス名を出すことは原則としてありません。もし実名を出してしまうと、運営企業に対する不当な営業妨害や風評被害を招き、巨額の損害賠償問題に発展するリスクがあるためです。
プラットフォーム側の対策とのいたちごっこ
運営側はAIによる不審アカウントの監視や身分証による本人確認を徹底していますが、犯罪組織は「他人名義の認証済みアカウントを裏ルート(闇バイト等)で購入する」といった手段で潜入してくるため、完全な排除が難しいのが現状です。
マッチングアプリぼったくりの「共通手口マニュアル」

男女問わず、犯罪グループが使用している「共通の手口(マニュアル)」は酷似しています。以下の特徴に一つでも当てはまる場合は、高確率でぼったくりの罠です。
| 段階 | 犯罪グループの具体的な行動・特徴 |
| 1. マッチング直後 | ・LINEや他の連絡ツールへの移行を急ぐ。 ・「すぐ会いたい」「今日暇になった」など、展開が早すぎる。 ・プロフィール写真が美男美女で、洗練されすぎている。 |
| 2. 店の決定時 | ・「お気に入りのお店がある」「行ってみたいバーがある」と、相手側が頑なに店を指定してくる。 ・こちらが提案する店や、予約の取りやすいチェーン店を拒否する。 ・事前に店名やURLを教えず、「現地で待ち合わせて一緒に行こう」と言う。 |
| 3. 入店直後・店内の様子 | ・店が看板を出していない、雑居ビルの上階や地下の一室にある(またはレンタルスペース)。 ・メニュー表を見せない、あるいは「一律〇〇円」の簡易的な説明のみ。 ・相手が「トランプゲーム」や「お祝い」を提案し、高額なボトルを大量に注文させる。 |
| 4. 会計・請求時 | ・数時間の滞在で数万〜数十万円、時には100万円を超える法外な請求。 ・相手は「財布を忘れた」「カードが使えない」と困ったフリをし、こちらに「後で返すから立て替えて」と心理的プレッシャーをかける。 |
| 5. 決済・追い込み | ・手持ちがないと言うと、店員が複数人で囲んで威圧する、または「信頼を裏切るのか」と感情に訴えかける。 ・「近くのコンビニATM」に同行させ、その場で現金を作らせて回収する。 |
被害に遭わないための徹底防犯対策(男女共通)

マッチングアプリを利用する上で、ぼったくり被害を回避するための鉄則をまとめました。
万が一、被害に遭ってしまったら
もしも脅されて支払わざるを得ない状況になったり、支払ってしまった場合は、以下の行動を即座に取ってください。
まとめ:マッチングリテラシーを高めるために
マッチングアプリは非常に便利な出会いのツールですが、画面の向こうにいるのは「素敵な恋活・婚活中の一般人」ではなく、あなたから現金をむしり取ろうと待ち構えている「犯罪組織のサクラ」かもしれません。2026年現在は、実店舗すら持たないゲリラ的な「レンタルスペース型」や、好意や優しさにつけ込む手口など、男女問わず誰が被害に遭ってもおかしくないほど巧妙化が進んでいます。
「自分だけは大丈夫」「せっかく格好いい人・可愛い人とマッチングしたのだから、機嫌を損ねたくない」という油断や見栄を捨て、違和感を覚えたら即座に撤退する毅然とした態度(マッチングリテラシー)こそが、あなたの大切な財産と身の安全を守る最大の防具となります。
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